ミャンマーにおける人口高齢化をふまえたUHCの段階的実現のためのデータの有用性と政策に関する分析

実施期間

2019年5月 - 2021年12月

連携機関

代表研究機関: ヤンゴン経済大学
参加研究機関: アジア開発銀行、保健・スポーツ省(ミャンマー)、公衆衛生大学(ミャンマー)、マヒドン大学
主導研究者: Min New Tun、Cho Cho Thein(ヤンゴン経済大学)

研究対象地域

ミャンマー

総予算

US$ 60 000.00

背景

ミャンマーは、国全体のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の段階的な実現を公約しています。65歳以上の人口は、2035年には現在の2倍以上におよぶ人口の9.8%に達すると予測されています。したがって、UHCおよび人口の高齢化に関連する政策や利用可能なデータの見直しが不可欠です。

目標

次期国家保健計画(2022-2025)において人口高齢化のニーズに対応するための有効なデータや政策文書を分析し、2030年に向けてUHCに関する将来計画を立案する。

研究手法

  1. 人口高齢化を含むUHC関連の課題を取り上げた国内外の既刊文献および灰色文献のスコーピング・レビュー
  2. 高齢者の保健ニーズやUHCに対する影響に関して、あらゆる政府部門の利用可能なデータ、計画、政策、法案を、特定、マッピング、評価
  3. 主要な政府・非政府ステークホルダーおよびサービス提供者からの聞き取りおよび協議

研究結果

1. スコーピング・レビューから以下のことが明らかになりました。

  • 障害のある人の77%が地方に居住していることから、地方に暮らす国民の保健医療および社会的ケアのニーズを管理することがミャンマーでは主要な課題となる。
  • 障害を有する率は高齢者で高く、ひとつあるいは複数の身体的障害を報告した人は60歳以上で57%、80歳以上では90%にのぼる。
  • 自然災害は重大な問題を引き起こし、高齢者や障害をもつ高齢の人々の保健医療や社会的ケアの継続性に影響を与える。

2. 政策およびデータのマッピングから以下のことが明らかになりました。

  • 中国、日本、マレーシア、タイなど他のアジア諸国の利用可能なデータと比較した場合、特に、高齢者とその家族の保健医療および社会的ケアに関するデータに格差があること。
  • 障害や障害に関連するサービスのニーズを系統的に評価する手段がないこと。
  • 高齢者に対する保健医療および社会的ケアの保障が明確化されていないこと。  

主要なステークホルダーは、聞き取り調査において、保健医療制度を適応させる必要性、健康促進や予防、リハビリなど高齢者にアクセス可能かつ適切なプライマリ・ケア・サービスを拡充する必要性、また、UHCに向けた国家戦略へのライフコース・アプローチについて主に言及しました。

世界的な示唆

高齢者を包摂するUHCの実現に向けて、ミャンマーでは、高齢者やその家族の保健医療および社会的ケアのニーズに関し、より良質なデータを収集する必要があります。地方でのプライマリー・ヘルスケアおよび社会的ケアの開発を優先し、それらの災害に対するレジリエンスを高め、このようなケアを必要とする高齢者に対する公的な保障を明確にすることも必要とされています。

地元関西にとっての意義

関西地域において培われてきた、災害に強く、人口過疎地の高齢者にも行き届く医療福祉制度づくりと、関連データの運用における貴重な経験と専門的な知識は、ミャンマーをはじめとする同じような課題に直面する国々にとって有益です。人口高齢化に適応する保健医療制度に役立つエビデンスを必要とする国々にとって、その教訓の共有は極めて有用です。

テクニカルレポート(英語版)

出版物

​Kowal, P. , Tun, M. , Leik, S. and Rocco, I. (2021) Contributions of Social Networks to Health and Care Services in Myanmar’s Older Adult Population: 2012 Myanmar Aging Study. Health, 13, 1530-1545.  doi:10.4236/health.2021.1312109