コミュニティの回復力強化に向けた戦略に関する体系的同定および評価

実施期間

2021年5月 - 2023年7月

連携機関

代表研究機関: Baylor University (米国)、広島大学(日本)

参加研究機関: McLennan County Medical Education and Research Foundation (米国)、兵庫県立大学(日本)、Robin Moore and Associates (オーストラリア)、Queensland University of Technology (オーストラリア)、Ministry of Health and Family Welfare (バングラデシュ)、UT Southwestern (米国)

主導研究者: Dr. Benjamin Ryan (Baylor University)、加古まゆみ(広島大学)

研究対象地域

世界各国

総予算

米ドル 103 000.00

背景

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、感染患者および無症状感染者ともに感染を拡大する可能性があり、潜伏期間が長く、ヒトからヒトへの感染性が強いことから、対応に苦慮する難題となっています。これにより、社会、保健医療、経済の各分野に大きな混乱が生じています。最も甚大な影響を受けているのは弱い立場にある人々で、具体的には、高齢者、基礎疾患のある人、自営業者、低所得者、保健医療へのアクセスに制限のある人などが挙げられます。経済的に弱い立場にある人々は長期間の規制措置に持ち堪えられませんが、ほとんどの国は国全体に十分な支援を継続的に行う力がありません。この難題に対応するには、コロナ禍およびコロナ後のコミュニティの回復力を強化する必要があります。

世界保健機関(WHO)の災害・健康危機管理(Health EDRM)の枠組みは、今後の手引きとなるものです。国やコミュニティの経験を共有し、あらゆる災害や危機の管理に情報を役立てるための骨格であり、これには、公衆衛生システムおよびリスク管理、「より良い復興」に向けた活動の設計と実行に関する障害、また、それを可能にする要因の調査が含まれています。

このプロジェクトでは、この枠組みを使用して、複数の地方自治体、および国にわたる公衆衛生システムの回復力の要因についての理解を深めます。公衆衛生システムレジリエンススコアカード(スコアカード)バージョン2は、これらの場所の優先すべきアクションを体系的に識別、評価、および推奨するために適用されます。スコアカードは、WHOとパートナーの支援を受け、国連防災機関(UNDRR)によって開発されたもので、Health EDRMの枠組みと連携しています。

このプロジェクトの焦点は地方自治体にあり、既存の公衆衛生、災害管理、および政府の構造との整合性が確保されます。対象地域は、オーストラリア(アデレードとダーウィン)、バングラデシュ(ダッカとランプル)、日本(広島と兵庫)、米国(ダラスとウェーコ)です。これにより、都市部、農村部、密度、災害リスク、文化的信念、開発、アクション、リスク認識、COVID-19に対する措置など、複数の要因を比較することが可能です。本プロジェクトは、複数のコミュニティや国を対象にしてこの方法をとり、「より良い復興」に向けたコミュニティ回復力強化に関する一般化かつ翻訳可能な戦略の立案に必要な多様性を備えています。

目標

  • 複数のコミュニティや国を対象に、新型コロナウイルスのパンデミックや疾患のアウトブレイク、その他の災害からの公衆衛生システムの回復力に影響を与える要因を同定する。
  • コミュニティの回復力を強化するためのアクションを同定し、順位を付け、優先すべきものを明らかにする。
  • スコアカードとHealth EDRMの整合性、および、要となる弱者とキャパシティに対する取り組みが都市部と農村部でどの程度行われているかを調査する。
  • 公衆衛生システムの回復力強化における、他分野の役割も含めた「社会全体での取り組み」の役割を同定する。
  • 「より良い復興」を目指し、来る災害のリスクを低減する長期的かつ持続可能な戦略の実行に向けたアクションに優先順位をつける。

研究手法

  1. スコアカード導入のため、プロジェクトチームメンバーをトレーニングする。
  2. 回復力の強化に向けて優先すべきアクションを体系的に明らかにするため、ワークショップを活用し、調査対象地でスコアカードを適用する。
  3. 公衆衛生システムの回復力強化のため地域で優先すべき事項の概要に関し、調査対象地ごとのレポートを作成する。
  4. すべての調査対象地で同定した優先すべきアクションを評価し、都市部/農村部での課題を調査し、合同ワークショップでHealth EDRMとの整合性を解析する。
  5. 優先すべきアクションを同定、照合し、「より良い復興」に向けた一般化可能な戦略を促進する。

期待される成果

  1. 複数のコミュニティや国の公衆衛生システムを強化する戦略を促す政策概要
  2. 「より良い復興」に向けて取るべきプロセス、コミュニティの状況により優先すべき事項、持続可能な戦略について記述し解析する論文
  3. スコアカードの議論に役立つアプリケーションソフトウェア
  4. 地域や国内、海外での会議における会議論文および発表

出版物

  • Ryan B, Kako M, Brooks B, et al. Systematically Identifying and Evaluating Strategies for Strengthening Community Resilience. Prehospital and Disaster Medicine. 2023;38(S1):s72-s72. doi:10.1017/S1049023X23002133
  • Tayfur I, Simsek P, Gunduz A, Kako M, Nomura S. & Ryan B. Strengthening public health system resilience to disasters in Türkiye: Insights from a scorecard methodology, International Journal of Disaster Risk Reduction, Volume 113, 2024, ISSN 2212-4209. https://doi.org/10.1016/j.ijdrr.2024.104869.