脆弱性と脆弱な人びと

脆弱性と脆弱な人びと

コミュニティの災害危機管理

いかなるコミュニティや国も、災害にさらされるリスクからは逃れられません。災害の影響と直結しているのは、個人やコミュニティの持つ、危険事象に対するレジリエンスまたは感受性です。個人またはコミュニティの脆弱性を理解し、特定することは、災害危機管理の方針やプログラムの作成や実施のための基本です。こうした方針やプログラムが、コミュニティの災害リスクを減らし、レジリエンスを高めることにつながるのです。

脆弱性

脆弱性とは「身体的、社会的、経済的および環境的因子または過程により決定される諸条件であって、個人、コミュニティ、資産またはシステムの危険事象に対する感受性を増幅するもの」と定義されます。

脆弱性を決めるのは、歴史的、政治的、文化的、制度的そして天然資源に関わる過程です。これらの過程は、人びとの生活や生活様式を形作り、脆弱性の一連の根本的な要因を生み出しています。脆弱性としては、リスクの高い地域や劣悪な住宅に住むこと、不健康、政治的緊張または地域に制度や準備対策が欠けていることなどがあげられます。

脆弱性は、災害がコミュニティや住民に及ぼす健康リスクを決めるうえで重要です。災害のリスクは、災害の過酷さや被災した人の数だけでは決まりません。災害のリスクは、住民が災害の衝撃に対してどの程度の感受性を持っているかにも左右されるのです。このため、脆弱性のレベルをハザード曝露との関係で捉えれば、なぜある危険事象が過酷な結果を生み、他の事象ではそうならないのかがわかります。

もっと詳しく

脆弱性に関する追加の情報は、『災害・健康危機管理の研究手法に関するWHOガイダンス』(2022年改訂)の「3.2章 災害のリスクファクター:災害事象、曝露と脆弱性」で参照できます。

 

脆弱な人びと

ある住民グループが、他の人びとと比べて、災害に対してより脆弱であることがあります。この違いは、年齢、性的同一性・性自認、人種、文化、宗教、障がい、社会経済的地位、地理的条件または移住者としての地位といったその人びとの特徴に起因します。重要なのは、災害・健康危機管理の実証的研究を行ったり、実践するにあたって、非主流派や脆弱な人びとを確実にその対象に含め、その意向などが反映されるよう取り計らうことです。

コミュニティの脆弱性やレジリエンスは、また、次のような要因によっても変わり得ます。

  1. 年齢と発達段階
  2. 性的同一性・性自認
  3. 持病の慢性疾患
  4. 障がいを持つ人びと
  5. コミュニティの非主流派

ハイリスクグループの災害健康リスクを減らすために重要となるのは、コミュニティ内の脆弱な人びとと危機管理能力とを把握しておくこと、そして、災害・健康危機管理の中で適切な脆弱性低減戦略を作成し、実施することです。

もっと詳しく

脆弱な住民に関する追加の情報は、『災害・健康危機管理の研究手法に関するWHOガイダンス』(2022年改訂)の「2.5章 災害研究における脆弱集団の同定と参画」で参照できます。