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リスクアセスメントとツールキット
コミュニティの災害危機管理
オールハザード型リスク管理手法は、あらゆる非常事態への備えと対応行動において重要です。この手法は、組織横断的かつ社会一体によるアプローチを基礎にしています。この手法を使うことで、コミュニティの能力開発の過程で、誰かが取り残されたり、差別されたりすることがなくなります。
すべてのコミュニティや国が災害に遭うリスクに曝されているとはいえ、災害のリスクには違いがあります。危機管理手法では、リスクアセスメントの重要性が強調されます。リスクアセスメントは、適切なタイミングでの効果的な行動を促し、また、より良い予防、備え、対応および復旧に向けた戦略と方針のエビデンスとなる点で重要なのです。
コミュニティの災害リスクは、災害のすべての局面において、コミュニティの危険事象への曝露、脆弱性、そして危機管理能力の直接の影響を受けます。リスクに特化した能力があれば、危険事象からの衝撃を防ぎ、または弱め、曝露を減らし、脆弱性を最小化したり、能力を向上させ、そして、その国やコミュニティにおける非常事態の悪影響を効果的に最小化することができるのです。
WHOは2021年に、『戦略的リスクアセスメントのためのツールキット(STAR)』を作成しました。これは包括的かつ使いやすいリスクアセスメントのツールとなっています。STARを使ったリスクアセスメントは、行動の指針となり、計画立案の基礎情報となり、戦略と方針のエビデンスとなります。これがより良い予防、備え、対応、そして復興につながります。非常事態や災害時に「社会一体となった行動」を起こすためには、これが非常に重要です。
災害・健康危機管理の方針やプログラムの作成、実践、改善を通じて備えを強化するために不可欠となるのが、災害のリスクとその災害を引き起こすリスク要因の見積りです。この見積もりにあたっては、次の項目を評価します。
- 住民が曝される危険事象の過酷さ。
- コミュニティ内の、場所と住民グループの脆弱性。
- その地域が現在有する、非常事態に対応できる能力。
1. 危険事象の特定
危険事象とは、人の死傷またはその他の健康上の影響、財産の損失、社会的・経済的混乱もしくは環境の悪化を惹き起こす過程、現象または人間の活動です。
国連防災機関・国際科学評議会『仙台ハザードの定義と分類のレビュー:テクニカルレポート』(2020年)には、302におよぶハザード情報プロファイルのセットであって各国政府や利害関係者に共通するものが含まれています。リスク軽減と管理に関して戦略と行動を決定する際の基礎となるものです。
2. 脆弱な住民の特定
脆弱性とは、個人、コミュニティ、システムまたは資産の特徴および状況であって、それによってその個人等が危険事象の衝撃からの影響を受けやすくなるものをいいます。脆弱性は、以下の項目を含む様々のリスク要因で決まります。
- 人口統計特性:例えば、性別、年齢、慢性疾患、免疫。
- 社会的要素:例えば、識字能力、失業、貧困、所得状態、乏しい人間関係。
- 環境要素:例えば、安全でない飲料水、衛生状態、食料不安、無計画な都市化、気候変動、蚊の病原体媒介種の発生源との近さおよび紛争。
- 政治的要素:例えば、災害危機管理方針やプログラムがない。
脆弱な住民は、高い災害リスクに直面することがあり得ます。これは、その人たちについて、リスクを押し上げる要因があるためです。リスクを押し上げる要因としては、気候・環境の脅威の影響を受ける地域であるとか、不可欠のサービス(例えば、水道や下水)が不十分であるとか、また、家族・コミュニティの構造やネットワークが崩壊しているといった事情があげられます。
住民の脆弱性を評価する手法はいくつもあります。疾患による死亡率、疾病率、健康上のリスク要因、ハザード曝露、そして対処能力に関するデータを分析すれば、もっともリスクの高い住民、不利な状況または非主流派に追いやられたグループ、社会経済的状況、構造的および文化的アイデンティティ、そして地理的条件を突き止めることができます。
3. 地域の災害対応能力を評価する
能力とは、組織、コミュニティまたは社会の中に備わっている強さ、特質およびリソースの総体であって、災害リスクを管理、減殺し、レジリエンスを高めるものをさします。
対処能力とは、人びと、組織およびシステムが、入手可能なスキルやリソースを利用できる能力であって、その利用目的が、逆境、リスクまたは災害への対処であるものをさします。これには、継続する問題意識、リソースおよび良好なマネジメントを持ち・備えることが必要となります。これらの必要性は、平時であっても、災害または逆境下であっても、変わりません。対処能力は、災害リスクの減殺に役立ちます。重要なのは、コミュニティに能力が備わっていること、そして、災害が襲うとき、最初に対応するのは、たいていの場合、コミュニティであることとを理解しておくことです。