WHO神戸センターは、高齢者の医療・社会的ケアにかかわる未充足ニーズの理解に向けて研究を行っています。これは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ実現に向けた取り組みを世界が進める中、取り残されている人々を見定めるために必要なものです。未充足ニーズは、様々な態様があり得ます。ケアのニーズを抱えている自覚がないために、必要なケアが受けられない場合から、ニーズを抱えていることを自覚してはいるものの、必要なケアを一切受けることができなかったり、次善のケアしか受けられなかったりする場合もあります。
2024年6月10日と11日、各国内や各国間での未充足ニーズ測定の実行可能性を評価し、そのようなデータを取得することの実用価値に対する各国・地域の見解を把握するため、WHO本部、地域事務局、各国・地域の研究パートナーの関係者による会議を当センターで開催しました。
参加された方々から、この会議で得たことや今注目が高まるこの研究分野についてお話を伺いました。
WHOアフリカ地域事務局(AFRO)保健医療情報システム、チームリーダーのベンソン・ドロティ氏は、未充足ニーズを理解することが研究者や世界の国々にとっていかに重要であるかを強調し、次のように述べています。
「私たちがさらに力を注ぐべき課題は、未充足ニーズとは何たるかの解明、そして、いかに未充足ニーズを定量化するかです。未充足ニーズを効果的に追跡するためにはそれが必須だからです。すでに各国にあるシステムを活用して未充足ニーズについての情報をたくさん生み出すことが実際にできるのです。」
アフリカ地域には、14年前に構築された保健医療のデータや情報に関するオープンソースの「ワンストップ・ショップ」があり、現在では地域全体と47か国それぞれに連携するプラットフォームがあります。
「そのアフリカ保健観測所(African Health Observatory)に掲載すべき具体的な指標を特定し、それらを追跡できれば、アフリカ保健観測所が、各国の未充足ニーズに関する情報にアクセスするためのプラットフォームにもなるでしょう。未充足ニーズを追跡することの重要性は、いくら強調してもしすぎということはないのです。」
ドロティ氏のインタビューはこちらをご覧ください。
WHO本部シニアヘルスエコノミストのガブリエラ・フローレス氏は、未充足ニーズに関して当センターが行ってきた研究について、次のように述べています。
「未充足ニーズについてはまだわかっていないことが多く、未充足ニーズと社会的ケアに関するWHO神戸センターの研究は非常に重要です。」
当センターはCARETRACKコンソーシアムの設立を支援しましたが、ここでさまざまな地域が協働することで、多くのデータがまだ解析されていないことが明らかになりました。
「データの収集方法には違いがあるものの、そこから得られる知見は政策立案の根拠となり得ます。また、WHO神戸センターが今後発表する予定の関連出版物は政策議論を進めるうえで非常に重要なものとなるでしょう。」
フローレス氏のインタビューはこちらをご覧ください。
WHO保健医療財政に関するバルセロナ事務所シニアヘルスエコノミストのジョン・サイラス氏は、特に高齢者において、医療・社会的ケアの未充足ニーズに関する世界規模のデータを拡充することの付加価値について次のように述べています。
「理想的なのは、未充足ニーズに関する質問を家計調査に含めることです。そうすれば、未充足ニーズを抱える家庭と高額の保健医療支出を余儀なくされた家庭の直接の関係を見られるからです。同じサンプルを使わない限り、これらを関係づけることは出来ません。質問や定義の統一という点だけでなく、グローバルレベルでこのような質問が調査に盛り込まれるようにする点でもWHOは非常に重要な役割を担っています。」
サイラス氏のインタビューはこちらをご覧ください。
未充足ニーズとは何か、またそのモニタリングが重要な理由について、当センターのローゼンバーグ恵美技官が説明している動画はこちらをご覧ください。
グローバル研究コンソーシアムCARETRACK議長で中東及び北アフリカにおけるヘルシーエイジング研究(MENARAH)責任者のシェリーン・フセイン教授のインタビューはこちらをご覧ください。
会議の報告書はこちらをご覧ください。