公衆衛生・環境保健分野における世界の学術誌の中でインパクトファクター(学術誌の影響度を測る評価指標の一つ)が上位15位に入る「Bulletin of the World Health Organization」の2025年12月号で、30年にわたるWHO神戸センターの貢献が巻頭辞として掲載されました。
本記事では、当センターの所長をこの8年務めたサラ・ルイーズ・バーバー所長が、この度発表した「WHO神戸センター設立30周年記念報告書」をもとに、WHO直轄の事務所として当センターが神戸の地で積み上げた成果を振り返りました。
設立当初10年(1996年~2005年)の主な成果の一つとして、いくつもの世界的に重要な国際会議を主催することで、グローバルヘルスの舞台に神戸を押し上げました。続く10年(2006年~2015年)は、「都市環境研究情報ネットワーク」の報告書や、国連人間居住計画(UN-HABITAT)とWHOの共同による都市部の保健に関するグローバル・レポート2件の発表などに取り組み、研究センターとしての地位を確立しました。
その後の10年(2016年~2025年)では、人口高齢化が進む中での持続可能なユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)実現に向けた、保健医療サービスの提供と持続可能な資金調達に関する革新的な政策研究が高く評価されるようになりました。また、「災害・健康危機管理に関するWHOグローバル・リサーチ・ネットワーク」の事務局としての役割を通じて、この分野での研究を推進し、健康危機管理の研究手法に関するWHO初のガイダンス本の編纂も手がけました。
2016年からの10年間に限っても、当センターは国内外の約160の研究パートナーや研究機関との共同プロジェクトを通じて250以上の出版物や査読付きの論文を発表し、パートナーとのネットワークを活用しながら研究の成果や知見を政策立案者に普及させてきました。
当センターの主な資金提供者である神戸グループ[1]および兵庫県と神戸市の皆様には、30年という長きにわたりご支援いただいたことを、このWHO機関誌の巻頭記事を通じて、改めて感謝申し上げます。当センターは2026年3月に閉鎖を迎えますが、これまでに積み上げてきた功績は、パートナー機関に今後も受け継がれ、また、未来の世代に恩恵をもたらすと期待されます。
[1] 兵庫県、神戸市、神戸商工会議所、株式会社神戸製鋼所