2025年10月28日、WHO神戸センターのローゼンバーグ恵美技官は日本老年学的評価研究(JAGES)チームと神戸市健康局政策課をはじめとする各関連部局と共に「 神戸市における新型コロナウイルス感染症流行期の行動変容とその健康への影響に関する分析」の最終報告会をWHO神戸センターとオンラインのハイブリット形式で開催しました。部署の垣根を越え、オンラインと対面合わせて30名以上が参加しました。
新型コロナウイルス感染症による生活習慣への影響は、健康リスクに関するものを含め多くの証拠が示されていますが、パンデミックの間接的な影響、特に成人に関するものは十分ではありませんでした。本プロジェクトは、神戸市が提供する公的な電子データ(ヘルスケアデータ連携システム)を用いて、新型コロナウイルス感染症の発⽣前後に認められる市⺠の生活習慣、健康状態、医療や介護の利⽤状況を表す指標などに⾒られる変化や特徴を明らかにすることを⽬的として⾏われました。
報告会では、関係者間で分析の最終結果の共有と今後の課題についての検討が⾏われました。新型コロナウイルス感染症流行前後の比較において、健康行動に関しては社会参加や交流の減少が見られ、壮年期ではうつや不眠などの心理的疾患の増加が、高齢者ではフレイル・要介護リスクの増加が確認されました。新型コロナウイルス感染症流行中の受診控えも認められました。他方で、高齢者において2016年に比べて2022年の「通いの場」参加者割合はむしろ増えていたり、総じて受診行動も速やかに回復するなど、神戸市の日頃の取り組みの成果が伺えました。多岐にわたる研究結果を踏まえ、平時から社会的孤立傾向にある人へのつながり支援を強化、感染症流行時には、感染症対策のみならず、他の健康課題を増やさない対策も考慮する、受診控えをする傾向にある人への支援を検討する、地域差を考慮した重点支援を行うなど、神戸市のみならず他の自治体にも参考となる多くの提言が行われました。
おしまいに今後のヘルスケアデータ連携システムの活用についても話し合いが持たれ、ローゼンバーグ氏は、「ヘルスケアデータは公共財であり、市民の財産です。今後も積極的に研究や事業評価などのために活用し、多くの有用な知見を生み出して、いかなる状況でも市民の健康とウェルビーイングが守られ、増進されるような効果的な政策や事業などの形で市民に還元してください」とコメントしました。