保健医療への早期投資によって、高齢者が集中的なケアを必要とする時期を遅らせることができる

2024年6月4日
ニュースリリース

介護を含む継続的なケアを高齢者に提供するための政策を決定する上で、財政的な持続可能性は大きな課題です。WHO神戸センターは、「継続的なケアのための資金調達:低・中所得国に向けた教訓」のブリーフ8の中で、継続的ケアの財政的な持続可能性に求められることについて世界で得られたエビデンスをまとめ、低・中所得国における公共の政策と投資に向けて指針を示しています。

継続的なケアにおける財政的な持続可能性は、将来に向けて重要となる考え方です。需要の増加に対応できるように長期的な収支のバランスをとり、健康・社会・経済における影響を幅広く考慮しつつ、人々が各サービスに公平にアクセスできるようにする政策が求められます。同時に、財政的な持続可能性の確保を優先して、ケアを必要とする人を経済的に保護することをないがしろにすることがあってはなりません。

一連の研究ブリーフの執筆に携わった当センターのサラ・バーバー所長は、次のように述べています。「継続的なケアの制度が確立されている国では、サービスの提供に必要な歳入目標や総予算を予測し、不足資金を補うために特別な基金を設立できます。いくつかの国では、将来の継続的ケアの費用負担を軽減し、財源を多様化させるために、世代をまたいだ費用負担を行うことで継続的なケアの歳入基盤を拡大したというエビデンスが示されています」

若い年齢層が比較的多い低・中所得国においては、継続的なケアの需要が高まる前に国内の税制を強化して、歳入を増やし、人的資源やインフラストラクチャー、組織に投資できる機会があります。

バーバー所長はまた、「高齢者が継続的なケアを必要とするようになる時期を遅らせることで、予算の圧迫を軽減できます。例えば、高齢者の自立支援やけがの予防につながるような、費用対効果の高い技術や住宅改修を継続的ケアの給付内容に含めることで、集中的な継続的ケアのサービスの利用開始を遅らせ、できるだけ自宅で過ごせるようになります」と述べています。

「保健医療への投資は、脳卒中や認知症などの加齢に伴う障害の発症を防ぐ上で欠かせません。このような投資は、高齢者に多い疾患を早い段階で抑制する助けとなる法律や規則、政策があると促されます。各国が継続的なケアへの投資を始めるのに早すぎることはない、と言えるでしょう」