新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックから得た教訓のうち最も痛ましかったことの一つが、介護を含む継続的なケアを受けていた脆弱な高齢者の間で、防ぐことができたはずの死亡が非常に多かったことです。
その多くは高齢者施設におけるケアの質と安全策が不十分であったために起きたと言えます。WHO神戸センターが作成した「継続的なケアのための資金調達:低・中所得国に向けた教訓」のブリーフ7では、低・中所得国における政策立案を支援するため、継続的なケアの質と価値に関するエビデンスをまとめています。
高い質の継続的なケアは、ひと中心の公平なケアを促し、ケアに対する本人の希望を尊重し、複数のケアニーズや安全性、生活の質、自主性に配慮します。
研究ブリーフの執筆に携わった当センターのサラ・バーバー所長は、次のように述べています。「質の高い継続的ケアのサービスを提供、モニタリングし、その資金を調達するためには、基本的な前提条件として、継続的なケアを提供するさまざまな状況において、質に関する原則と基準を定める強固な保健医療制度を構築することが必要です」
質の高い継続的ケアの提供やモニタリング、報酬の支払いには、ケアの質を保証するための強力な枠組みが必要です。例えば、施設やコミュニティーでのケア提供者の認定や規制に関する制度、また、質の低い有害なケアから高齢者を保護するような基準の施行などが含まれます。
「施設やコミュニティーにおけるすべての継続的ケア提供者から質に関するデータを収集することは容易ではありませんが、そうしたデータは質のモニタリングに役立ち、改善につながります。本研究では、最近の傾向として、有害な事象の測定よりも、高齢者のウェルビーイングや生活の質の測定に重点が移っている点が示唆されています」
ケアの質を向上させるために、質に応じて報酬を高くする国もありますが、保健医療と継続的ケアの質を向上させる上で、報酬額がどれほど影響するかについては明らかなエビデンスが得られていません。さらなる研究と評価が必要です。
バーバー所長はまた、「医薬品を評価し、継続的ケアにおけるケアの質の管理や病院・専門医への紹介プロトコルにも影響する各種臨床試験において、まさにそれらの医薬品やサービスの対象者である高齢者や多疾患依存症の人々が、一般的に臨床試験の対象から除外されていることが明らかになりました」と述べています。
「ひと中心の、質の高いケアを提供するには、生物医学的研究に高齢者を正式に含める必要があります。それによって関連する臨床ガイドラインが作成され、質の向上につながる報酬制度の根拠が示されるようになります」
低・中所得国は、先進国における経験や失敗から学び、生活の質のような望ましいアウトカムの測定を含め、継続的ケアの質や規制に関する強力な制度に早期に投資することができます。
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