継続的なケアを必要とする高齢者を経済的に保護するには?

2024年5月1日
ニュースリリース

WHO神戸センターは、低・中所得国における継続的なケアの制度設計や資金調達に関して政策立案者に役立つ研究のエビデンスをまとめた、一連の研究ブリーフ「継続的なケアのための資金調達:低・中所得国に向けた教訓」を作成しました。

ブリーフ6では、介護を含む継続的なケアにおいて、各国がどのように国民に対して経済的な保護を提供できるかという点を取り上げています。

多くの人は、必要となるかもしれない継続的ケアのサービスに対して十分な蓄えができていません。継続的なケアに関する先々のニーズや費用を過小評価しているか、全ての人が対象の保健医療サービスや健康保険でまかなわれると誤解しているためです。継続的なケアの費用は、経済的な保護がない場合、高齢者にとって非常に高額なものとなります。年金制度がある高所得国でも、継続的なケアの公的制度に経済的保護が組み込まれていなければ、ケアを必要とする高齢者の約半分が経済的困難に直面すると考えられます。

継続的なケアのフォーマルな制度がない国では、個人や家族、コミュニティーに負担が転嫁されます。特に貧しい人や健康状態の悪い人にその影響が偏り、特に女性は一般的に寿命が長く、ケアを要する期間も長くなる一方で、その支払いに必要な資金を欠くために大きな負担がかかります。

確固たるフォーマルな継続的ケアの制度により、ケアの放棄や継続的ケアへの高額な支払いから高齢者を保護できることが示された国もありました。特に、困窮者だけを対象とする継続的ケアの制度を持つ国と比較して、すべての人を対象とする継続的ケアの制度によって広く給付する国の方が、より効果的に経済的保護を実施し、サービス受給者の自己負担額を減らすことができます。

また、認知症や脳卒中の患者を含め、複雑なニーズをもつ人に対象を絞ることで、集中的なケアに対して高額な支払いを迫られる人々を保護できます。これは認知症による負担が増加すると予測されている低・中所得国では特に重要であり、脳卒中による世界的な負担のうち、大半はすでに低・中所得国で生じています。

継続的なケアによる経済破綻から高齢者を保護するためには、個人の負担額に上限を設け、必要な継続的ケアへの給付額の上限は撤廃する必要があります。状況によっては、必要な保健医療・社会的ケアに対する自己負担を減らすために、高齢者に特別な受給資格を設けます。低・中所得国では、高額の負担やケアの放棄を防ぐために、強力な継続的ケアの制度や政策への投資が必要となります。

当センターは、高齢者が質の高い保健医療をいつでも受けられ、経済的に保護され、保健医療の効果を得られるよう、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを促進するための持続可能な資金調達に関する研究を実施しています。

本研究プロジェクトの詳細は、こちらをご覧ください。