WKCフォーラム「震災・パンデミックなどにおける高齢者の脆弱性とレジリエンス」

2024年6月4日
ニュースリリース

2024年6月2日、日本老年社会科学会第66回大会が帝塚山大学学園前キャンパス(奈良県)で開催され、WHO神戸センターは、WKCフォーラム「震災・パンデミックなどにおける高齢者の脆弱性とレジリエンス」を実施しました。

フォーラムの座長は、WHO神戸センターのローゼンバーグ恵美技官が務めました。はじめに京都大学大学院医学研究科の近藤尚己教授が、「新型コロナウイルス感染症流行による高齢者の健康とくらしへの影響:JAGESの知見から」について発表し、日本老年学的評価研究(JAGES)に基づく20万人の高齢者追跡研究の結果、COVID-19の流行前に社会的凝集性と助け合いの規範が良好な地域ほど、流行中の抑うつ症状の発生が少なかったことを報告しました。続いて大阪大学大学院人間科学研究科の権藤恭之教授は、「新型コロナウイルス感染症流行による後期高齢者への心理的影響:SONIC研究の知見から」と題した発表の中で、調査に参加できるような比較的健康レベルの高い高齢者はCOVID-19のパンデミックのような厳しい状況にも​適応的な行動を取っていることを示しました。また、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の相田潤教授は、「東日本大震災による高齢者の社会経済環境の変化とそれが健康に与える影響」をテーマに発表し、宮城県岩沼市におけるJAGES震災前後の調査結果を中心に、高齢者の生活や健康に及ぼした多様な影響について説明し、人との交流が中長期的な死亡リスクを減らす効果が認められたため、孤立への対策が必要だと指摘しました​。最後に浜松医科大学医学部医学科の尾島俊之教授が「健康危機管理及び高齢者等への支援体制の進歩」について、災害時健康危機管理支援チーム(DHEAT)や災害派遣福祉チーム(DWAT)の制度化とその役割について解説すると同時に災害時に共助を実行する意思が高齢者ほど高くなる傾向なども示し、高齢者は脆弱性を抱えるとともに​力強い地域資源でもあると。

パネルディスカッションでは、行動制限がある状況でも人との交流を継続する手段としてのデジタル通信の可能性や、災害と高齢者の課題について行政データや質的データを活用することの意義について指定議論が交わされ、さらに会場からの質問を受けて、日本で増える外国人高齢者への配慮の必要性についても話題が及びました。

最後に、ローゼンバーグ技官がフォーラムを総括するにあたり、前日のシンポジウムで発言された「顔の見える地域づくりが減災につながる」という言葉を借りながら、「災害やパンデミックにおいて高齢者の健康と安全を守るためには、平時から災害を見据えた地域社会全体での関係づくりや備えが不可欠である」と締めくくりました。