セクション2:課題の同定と把握

2.3章 疾病負担:エビデンスを創出し、政策を導く


著者:野村周平、石塚彩


第2.3章では、疾病負荷の基本概念と、疾病負担がいかに災害を取り巻く健康問題の把握と理解に役立つかについて示し、特に以下の項目について焦点を当てていきます。 

  1. 疾病負荷の概念としての強み
  2. 死亡と障害データから疾病負荷を定量化する方法
  3. 疾病負荷の概念を用いた3つのケーススタディ

本章について

災害や健康上の緊急事態は死亡や障害を引き起こします。そのため、このような影響に関する、信頼できるエビデンスを持つことが重要となります。疾病負荷の基本的概念を理解し、死亡と障害の両方を考慮した指標である障害調整生存年(DALY)を用いることで、意思決定の際に、健康への影響を理解するのに役立ちます。この章では、疾病負荷の概念について説明します。DALYの定義と計算方法のガイド、実際の使用方法、世界の疾病負荷研究(GBD)の概要、そして疾病負荷の概念が実際にどのように使用されているかを示す3つのケーススタディで締めくくられています。 

本章のケーススタディ:

  1. DALYsと死亡率に基づく2011年東日本大震災の健康への影響の推定値の差異
  2. コロンビアにおける対人暴力は、1990年と2017年のDALYsの主な原因である 
  3. GBDプロジェクトにおける7つの災害に起因する世界レベルでのDALYsは減少傾向にある

本章のキーメッセージ:

  • 死亡と障害に関する包括的かつ比較可能なエビデンスは、災害・健康危機管理における政策立案と介入の優先順位をつけるための重要な土台となります。 
  • 疾病負荷を活用したアプローチでは、様々な疾病や損傷を原因とした死亡及び障害による健康の損失を定量化し、比較します。 
  • DALYは死亡と障害を統合し、集団の健康の要約的尺度を示します。 
  • DALYは異なる健康被害の比較を可能にし、DRR戦略の評価を可能にします。 
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