セクション2:課題の同定と把握

2.6章 科学的エビデンスの現状:エビデンスとシステマティックレビューの位置づけ


著者:Shaikh IA, Davies P, Man A.


第2.6章では、災害・健康危機管理(Health EDRM)の研究の情報源として、エビデンスの現状とシステマティックレビューの重要性について述べています。 

  1. 緊急事態管理の様々な段階に関連する、災害・健康危機管理の要素。
  2. 災害・健康危機管理におけるこれらの必須要素の適用と実践を標準化するための、現在の研究レベルと利用可能なエビデンス。
  3. 現在不足していると考えられる要素について、エビデンスを得るための最適な方法。 
  4. 緊急時・災害時にシステマティックレビューや調査を行う際の障壁や困難。 

本章について

災害や健康上の緊急事態において、効果的な介入策を最適に適用するには、研究から得られる信頼性の高いしっかりとしたエビデンスが必要です。質の高い研究を統合したシステマティックレビューは、意思決定者が災害マネジメントサイクルの様々な局面で実践できる、効率的で効果的な方法を特定するのに役立ちます。 

この章では、災害・健康危機管理のエビデンスの土台を改善するための3つのシステマティックレビューについて解説します:統計的メタ解析、ナラティブシステマティックレビュー、質的統合。システマティックレビューの作成手順とツールについて説明し、健康や医療に関する意思決定の様々な局面でコクランレビューがどのように利用されるかを概説しています。また、システマティックレビューの結果を紹介するケーススタディや、災害・健康危機管理に関連する特定のトピックに対するシステマティックレビューのエビデンスについて議論しています。 

本章について

  1. コクランとコクランデータベースシステマティックレビュー (CDSR)。
  2. 人道的な緊急事態の影響を受けた人々に対するメンタルヘルスと心理社会的支援策の影響に関するシステマティックレビューとメタ解析。
  3. 災害時の暴力に関するシステマティックレビューのエビデンス。 

本章のキーメッセージ

  • 災害・健康危機管理におけるエビデンス形成とその正確かつ一貫した適用には、多くの課題が存在します。エビデンスの限界を認識している実務者は、プログラムのデザイン、計画、実施、評価に必要な研修や技術を得ていない場合があります。また、新たな研究のための研究課題となりうる計画上および実践上の問題を見分けるための研修も不足しているかもしれません(3.5章参照)。
  • 低所得で資源に乏しい国や環境では、訓練を受けた研究者や実務者の数が不足していることに加え、災害・健康危機管理における研究者と実務者の交流の機会が限られている、あるいは存在しないという「二重の危険」に苦しむことになるかもしれません。
  • 災害・健康危機管理の実践コミュニティは研究を必要とするニーズや問題を特定し、学術部門は質の高い研究を実施し、調査機関や提供対象者は科学の実践と応用の溝を埋めるために、災害・健康危機管理に強い関心を持つ世界やの団体が強力なリーダーシップを発揮して、エビデンスの創出と利用に必要な主要グループをまとめなければならないでしょう。
  • システマティックレビューは、これらの過程に対する既存のエビデンスをまとめ、新しい研究の発見をエビデンスの全体像の中に位置づける手段を提供します。これにより、災害・健康危機管理の意思決定者は、利用可能な最良のエビデンスを活用することができるようになります。 
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