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セクション 3:研究スコープの決定
3.4章 研究倫理

著者:Dubois C, Wright K, Parker M.
第3.4章では、災害・健康危機管理(Health EDRM)に適用される研究倫理の重要な概念について、以下のように説明しています。
- 研究プロセスの様々な段階における倫理的配慮の役割と重要性。
- 非常時・災害時に運用される規範的な倫理指針の限界。
- 有効かつ価値ある結果を得るための、コミュニティとの相互関与の重要性
- プロジェクトマネージャー、研究助成機関、政府、研究倫理委員会の役割。
本章について
災害・健康危機管理研究において、知識の追求と参加者の安全および福利の確保を両立させることは重要ですが、研究の倫理に関する標準的なガイダンスは、災害環境での使用に適していない場合があります。災害研究の倫理原則を明確にすることは、研究者が研究の倫理性を確保するために役立ちます。
本章では、研究者が遵守すべき普遍的な倫理原則を概説します。これには、価値、実現可能性、妥当性、参加者の参加と除外、インフォームド・コンセント、害と利益の分析、参加者の保護が含まれます。また、利害関係者やコミュニティの参加によって、研究者がこれらの原則に責任を持ち、研究参加者との倫理的協力関係を築くことができるかを示しています。
本章のケーススタディ
- 規範的手順からの逸脱:西アフリカのエボラ出血熱に対する未登録の介入の使用。
- 2006年レバノンにおけるイスラエル・ヒズボラ戦争時の研究参加者の関与。
- 研究の約束を果たす:9.11テロ事件後のニューヨーク市消防局との共同研究。
本章のキーメッセージ
- 研究の計画・審査・実施・発表の各段階を通じて、単に倫理的な承認を得るだけでなく、考慮すべき倫理的側面があります。これらの配慮は、研究者が透明性のある方法で、利害関係者に対する短期的または長期的な損害を軽減するのに役立ちます。他にも、社会的利益への貢献、生活の向上、他の研究分野やコミュニティに貢献するための知識の適応、質の高い研究でエビデンスの溝を埋めないことによる潜在的な損害など、研究プロジェクトの与えるうるインパクトについて考慮することが重要です。
- 研究のデザイン・実施・利用についての意思決定において、研究課題の価値、実現可能性、妥当性を考慮される必要がある。アンメットニーズの解決に向けた研究の付加価値は、研究を実施しないことによる機会損失の価値も含めて、資金、時間、人的資源を正当化するために必要です。災害・健康危機管理の中で特定の活動の実現可能性は、研究プロジェクトを完了することの望ましさと同時に考慮されなければなりません。また、信頼できない、あるいは使用できない研究結果を避けるために妥当性が確保されなければなりません。
- 安全性、ロジスティクス、時間的制約、適切な人材の確保など、さまざまな分野で直面する固有の課題があるため、緊急時や災害時の状況で運用する場合、研究のための規範的な倫理ガイドラインを適応させなければならない場合があります。しかし、研究の厳密性と目的への適合性を確保するための基盤となる倫理的または科学的価値は適切に考慮される必要があります。
- 被災したコミュニティとの相互的かつ継続的な関わりは、データ収集を容易にし、エビデンスの質を向上させる要素を理解する手助けになるだけでなく、特に災害・健康危機管理という状況下で、コミュニティがより脆弱になった際に、尊重しあう協力関係を構築し、参加者の利益の保護に不可欠です。研究の成果は、最終的にコミュニティに還元され、将来の災害や緊急事態に対する対応力を高めるために、構築される必要があります。