国際高齢者デーに寄せて サラ・バーバー所長のメッセージ

2025年10月1日
ニュースリリース

毎年10月1日は、高齢化に伴う課題と好機についての意識を高めるため、国際高齢者デーに定められています。この日は、高齢者の社会への貢献を称え、高齢者の尊厳や自立、社会への包摂の重要性について改めて考える機会となります。今年は、健康でインクルーシブな高齢化の推進がテーマに掲げられています。 

2100年までに、65歳以上の人口は24億人に達すると予測されており、中でも80歳以上の人口が最も急速に増加すると予想されています。WHO神戸センターは、人口高齢化を見据えたユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現に向けた取り組みを加速させるための研究に重点を置いており、各国が介護を含めた継続的ケア等の保健サービスを高齢者が利用しやすい環境や価格で提供し、かつ受け入れられる内容にすることを目指しています。

当センターでは昨年から、UHCの促進に向けた世界的な取り組みにおいて高齢者が取り残されないようにするためにも、WHOの5つの地域において、高齢者(一般的に60歳以上)の医療・社会的ケアの満たされていないニーズに関する利用可能なエビデンスを評価する研究をリードしてきました。その結果、政策立案者は、高齢者の満たされていないニーズやその要因に関する知見の有無を各地域ごとに把握することができるようになりました。こうした研究は、包括的な医療・社会的ケアの計画に不可欠な医療情報システムの改善や、高齢者の健康とウェルビーイングを導くのに役立つことが期待されます。本研究に関する出版物はこちらからご覧いただけます。

また、保健サービスの資金がどのように調達されるかという点も、高齢者にとって保健サービスが広く利用できること(カバレッジ)、サービスの質、費用負担の軽減、そして健康アウトカムを確保する上で重要です。持続可能な資金調達に関する当センターの研究では、介護を含めた継続的ケアのサービスへのアクセス拡大と質の向上が、健全な公共投資であり、経済的・社会的利益につながることを示すエビデンスを、政策立案者に提供しています。低・中所得国における継続的ケアの資金調達に関してまとめた11件の研究ブリーフでは、健康な高齢化を促進するテクノロジーの可能性や、家族などのインフォーマルな介護者への支援、各国が継続的ケアの質と価値をどのように高めるかといったトピックを取り上げています。当センターはまた、欧州保健医療制度政策観測所と共同で出版した書籍で、各世帯、保健システム、経済、そして社会など、あらゆるレベルで利益をもたらす継続的ケアへの公的投資の重要性に関して提言しました。 

当センターが各国の研究者と共同で創出したこれらのエビデンスに基づいて、世界中の政策立案者がUHCの実現に向けた努力の一環として高齢者の健康と福祉の向上を促進し、尊敬と感謝に値する存在である高齢者が取り残されることのないよう行動してくれることを願っています。