セクション4:研究デザイン

4.3章 クラスターランダム化比較試験


著者:Coldiron M, Grais RF. 


第4.3章では、クラスターランダム化試験の災害・健康危機管理(Health EDRM)における役割について、以下の点に焦点を当て、示しています。 

  1. クラスターランダム化試験法の長所と短所。 
  2. クラスターランダム化試験を用いることができる状況。 
  3. クラスターランダム化試験の実施に際して起こりうる困難とそれを克服するための解決策。

本章について

災害・健康危機管理では、多くの場合介入は集団レベルで実施されるため、介入・行動・戦略の効果を評価するに際して、個人レベルでの無作為化試験を実施することが不可能または適切でない場合があります。代替案として、クラスターランダム化試験において、参加者のグループを「クラスター」としてランダム化するよう研究がデザインが考えられます。 

この章では、クラスターランダム化試験が集団レベルの介入を評価するためにどのように使用できるかを説明します。クラスターランダム化試験のデザイン、利点、欠点、および分析におけいて何が考慮されるべきかを示します。例えば、クラスター試験が個別ランダム化試験よりも適切かどうかの決定、参加者からインフォームドコンセントを得るための方法、およびクラスタリングを考慮に入れるために分析を調整する必要性などの問題が含まれます。本章では、エボラ出血熱に対するワクチン接種のクラスターランダム化試験、ニジェールにおける髄膜炎菌性髄膜炎に対する村全体の抗生物質予防投与とこの試験のインフォームドコンセントプロセスを試験するためのクラスターランダム化試験の利用について、ケーススタディを紹介しています。 

本章のケーススタディ

  1. エボラ出血熱ワクチン評価のための新規クラスターランダム化デザイン
  2. ニジェール・マダロウンファ地区で発生した髄膜炎菌性髄膜炎における村全体の 抗生物質予防策に対する試験
  3. ニジェール・マダロウンファ地区における抗生物質予防のクラスターランダム化試 験における参加許可の取得とインフォームドコンセントのプロセス。 

本章のキーメッセージ

  • クラスターランダム化試験は、多くの緊急事態によく適応した介入研究であり、集団レベルの介入を評価するために理想的です。
  • 個別ランダム化試験と比較して、クラスターランダム化試験は通常、より多くの参加者を必要とし、デザインおよび分析がより複雑になる可能性があります。
  • クラスターランダム化試験は、Stepped Wedge デザインのように、並行無作為化または順次無作為化することができます。
  • 基本的な倫理原則は個別ランダム化試験におけるものと類似していますが、オタワのガイドラインはクラスターランダム化試験の特殊性を考慮しています。
  • クラスター無作為化試験のデザインおよび解析には、注意深い考察および経験豊富な研究者の指導が必要です。
本章をダウンロード
本章の概要についてもっと見る