セクション4:研究デザイン

4.5章 発展的統計テクニック


著者:Vigneri M, White H.


第4.5章では、災害・健康危機管理(Health EDRM)の効果を評価する上で、より高度な解析について、以下の点を主軸に、解説していきます。 

  1. 無作為割り付けがない場合の効果推定に関するさまざまなアプローチ 
  2. これらの異なるアプローチの利点と欠点 
  3. 介入群と比較群の両方におけるベースラインデータの重要性 

本章について

通常、ランダム化試験は介入・行動・戦略の効果を比較するための最もロバストな研究方法であるが、災害・健康危機管理に関連する環境では常に実施可能ではありません。ランダム化が不可能な場合、異なる介入策の相対的効果は、準実験的手法や回帰解析に基づくアプローチを含む、他の様々な技術や分析を通じて推定することができます。 

本章では、災害・健康危機管理の効果評価研究で利用可能な非実験的な定量的手法をいくつか紹介します。例えば、傾向スコアマッチング、回帰不連続デザイン、分割時系列、操作変数法と呼ばれる回帰に基づくアプローチなどが挙げられます。これらの手法の長所と限界について、災害やその他の健康における緊急事態のケーススタディを用いて説明します。 

本章のケーススタディ

  1. 傾向スコアマッチング(PSM)を用いて、マリ共和国の農村住民の食糧安全保障に対する人道的援助の影響を測定する
  2. 回帰不連続デザイン(RDD)を用いて、レバノンのシリア人難民に対する冬季現金支援プログラムの影響を測定する
  3. スリランカにおける災害と暴力の結びつきの理解へ向けて、環境変化の政治的 影響を測定するために操作変数を使用する

本章のキーメッセージ

  • ランダム化が行われていない場合でも効果の推定は可能ですが、介入を受けなかった比較群のデータが必要です
  • 利用可能な方法は、選択バイアスの影響を受ける可能性があります
  • 観測値に基づくバイアスが除去されているかどうかを確認するために、ベースラインのバランスをテストすることが重要です
  • マッチングの信頼性と二重差推定値の計算能力は、介入群と比較群の両方のベースラインの日付が入手可能であることによって向上します。 
本章をダウンロード
本章の概要についてもっと見る